| 2012.04.22 | ||
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| 前回記した「社会保障と税の一体改革」。民主党内でさえ異論、反論が収まらず、4月に入っても先行き不透明感が一向に消えません。「一体改革」といいながら、もっぱら消費増税が先行、突出し、社会保障の改革や内容の議論はタナ上げ同然です。どうなるんでしょう、私たち国民の社会保障のゆくえは?−この?マークはこれからも続きそうです。
さて今回は、私の「中間レポート」の続きとはいえ、まったく新しい話です。 そもそも国の助成金、補助金とは何でしょう?−私の考え、というより常識的に、国が法規にのっとって行う数々の事業を対象に、その事業を計画し実行するにあたり、関係団体・事業体を選定し予算計上していくべきものではないか。現に民主党政権は、その発足当初から、予算の点検、見直し、行政改革を積極化し、事業費が適正、合理的に活用されているか、「仕分け」の会議を公開で繰り返し聞きました。その実況がテレビで放映され、蓮舫議員の動きが際立って有名にさえなりました。昨今やや下火に見えますが、折々開かれていても、自分たちの政党への助成金は、取り上げられる気配がありません。「聖域」の一つでもあるかのように。 日本の政党の歴史を特に勉強して述べているわけでなく、ごく一般的な理解としていうと;−近代国家の成立にあたって自由民権運動が広がり、時の政府の圧迫を受けながらも、保守や中道や労農などの諸政党ができて議会活動を始めたのでした。太平洋戦争が終わった後は、軍国主義権力から弾圧を受けてきた日本共産党が合法化され、参議院に学者、文人が高位当選し、創価学会が宗教政党を立ち上げ等々、多種多様な政党活動が進められてきました。 いつから、そうなったのでしょう。1990年代に入って政治改革論議で浮上し、大企業や労組、団体などから政党への政治献金を制限する代償として1994年に問題の「政党助成法」ができたそうです。80年代末から90年代半ばにかけ、海外在勤、海外出張が続いた私は、ちょうどその時期が重なったせいで、問題の経緯、経過への注意や関心が削がれていたようです。 一体いくらの国税が割かれているのか。それも問題です。 では、各党には、どれほどの「助成金」が「交付金」として出ているか。政治資金規制法の収支全容が公表時期でなく不詳ですので、最近のおよその状況を記しておきます。 たった1党だけですが、共産党は、交付金を受け取っていません。共産党が偉いのではなく、それが政党本来のあり方だと思います。政党は、みずから政治関連の事業を企画・実行して収入を得るよう努力をし、例えば雑誌、新聞、単行本など出版事業で稼ぐなど、知恵と工夫で収支計画を立てるべきでしょう。毎年、全政党の政治資金収支報告書が新聞、テレビで報道されますが、例年そのように事業計画を実行し、総額トップの座を占めるのが共産党ですから、他の有力政党がやってできないはずがないと思います。共産党を褒めているのではありません。政党とはこうあるべきではないか、他の各党もぜひそうあってほしいと期待しているのです。 政党助成金を調べながら、「政治とカネ」に困って安易な国税依存を考えたのは、日本の政党の情けなさかと嘆いていたら、イギリスにも「政党交付金」があるんですって。しかし英国の助成金の総額は、上限が200万ポンド(約2億9200万円)に固定されています。確認はしていませんが、イギリスらしく特定の活動に助成しているのではないか。また、フランスでは、政党が男女同数の候補を擁立しない場合に、平等法に基づいて政府助成を減額し、ドイツでは、政党助成金の上限が決められ、イタリアでは、93年に国民投票の結果、政党助成金を廃止したそうです。 (4月20日記。国際サブロー) | ||
| 2012.03.28 | ||
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| 「社会保障と税の一体改革」−この半年余りずっと聞かされてきた言葉です。政権も与党の民主党も、平成24年度の政府予算案を3月8日に衆議院本会議で可決して後、3月末に向かって本腰入れて取り組む大問題といわれ、連日、関連の動きが続いています。 その割には、社会の理解と反応は、あまり進んでいないように感じます。新聞・TVはもとより、さまざまな声や意見が聞こえてきます。−まず先に消費増税ありきでは納得できない;民主党の内部にさえ異論が多く具体的な内容も固まっていないではないか;消費税は庶民生活への大衆課税、反対論は根強い;自公政権以来、特に小泉時代から受益者負担の言葉がまかり通って社会保障は減らされてきたのに、大企業や富裕層の減税や格差の拡大はそのままで消費税増額を迫るのは、いかにも公平を欠く;等々。1年前に東日本大震災が起き、救援や復興にはカネが要る−そんな思いに、カンパ・寄金は惜しまず、多少の増税にも応じる雰囲気があったかもしれません。が、消費増税は、大震災とは無縁で、今後幾年も延々とつづく重い負担です。 増税を強いる一方で、野田首相は、政府も国会議員も「身を切る」と述べました。議員の歳費削減や、国家公務員の新規採用を4割も減らすといいます。それが、消費増税への「見返り」ですか?−歳費を減らす=議員収入を減らすのを、議員でもない私たちはとやかくいわないけれど、それによって、議員の国政調査や本来の活動をしばったり低下させては困ります。そう思った数日後、調査費を削減?という記事が載りました。反対論封じのため?政府、与党の、それこそ独断と偏見としかいえない不当な考えです。 採用を減らすとはどうか?「身を切られる」のは、公務員を志望する学生や若者たちです。東北の被災県や自治体で立案や復興が進まないのは、人手が決定的に不足しているからだと報じられています。必要な若い人材こそ増やすべきではないか。被災県が決定的に人手不足であれば、若い人を採用して本省で鍛え、一定の年限でも、経験者を被災県内に出向・支援することができます。柔軟な考え方こそ大事でしょうに。 政治家が「身を切る」べき話は、他にも重大な事柄があります。上述の話とは違って、政治、政党の本来のあり方に関わると考えますので、切り離して詳述します。 前置きにしては長く、すでに話題提供に入りかけました。今回は、冒頭の「社会保障と税の一体改革」について、私が読んだり聞いたり調べたりの一部、いわば「中間レポート」を記していこうと思います。 ところで「社会保障」というと、私たちは、自分の日々の生活を中心に、例えば育児の問題、健康保険のあり方、あるいは年金を受け取る年齢など、身近な具体的な事柄を考えます。幅が広いし関連する金額や負担も多様です。政府・与党が昨年6月末に「検討本部」できめた「成案」を見ても、(1)子ども・子育て、(2)医療・介護、(3)年金、(4)就労促進などを掲げています。けれども国会に提出予定のそれらの関連法案は、2月末現在ほとんど未提出でした。「税との一体改革」と銘打つならば、まず社会保障の将来見通し、それに見合う税制論議を考案すべきではないか。この1月来、新聞紙上で、関連する評論家の意見を幾つも読みました。その中で、参考になった論述を紹介します。 −「社会保障維持のためには消費税率引上げが必要というが、いかにも中途半端な対応。財政全体の将来像を示すことこそ重要だ。10%への引上げで財政問題が解決するかのような誤解を生む恐れもある。政府は財政の将来像を提示し、ムダな歳出カットを前提に社会保障費を含めた歳出見通しを立て、その歳出に合わせて税収をどの程度増やしていく必要があるか、具体的な選択肢を示すべき。税収の増加には、直接税(法人税、所得税など)と間接税(消費税など)の比率をどうする、といった議論も不可欠。そもそも社会保障費を消費税でまかなう理論的根拠は乏しい。議論を尽くせば、望ましい社会保障と国民負担に関し、一定の方向性が見えてくる。歳出の5割近くを国債に依存する財政構造を今後も続けられる保証はない。消費税率を5%引き上げる税収増は、10兆〜12兆円程度。残る約30兆円の歳入不足を、どの程度の歳出削減と税収増加でカバーしていくか。早く方向性を決めないと内外の市場は待ってくれない。」−私も同感する点が多い論評です。(『朝日』朝刊・金融情報欄のコラム「経済気象台」1月27日付。掲載のつど「第一線で活躍する経済人、学者など社外筆者の一筆による」と注記されています) 別の1編では;−「増税反対派の最大の理由は、増税などしたら消費が落ち込み、生産縮小、失業者の急増で、低所得層ほど影響は大きい。大混乱に陥る。短期的な視点からいえば、デフレの現状のもとで増税など論外、日本経済は沈没してしまう。これに対して増税不可避とする立場は、財政破綻の危機が現実味を帯びてきた今、政府が財政再建の姿勢を示さないと、日本の国際格付けがまた引き下げられ、市場不振から国債価格が下落し長期金利が急上昇する。金融機関などの含み損、株価下落など、日本経済全体が大混乱に陥る」と。(同上、「経済気象台」1月20日付。注記は同じ)−進・退ともに大混乱の懸念です。短期的な展望と長期的な憂慮と両面併記され参考になりますが、当面の方向を打ち出すにも、具体的な詰めの論議が必要でしょう。私は評論家の端くれでもありませんから、野田政権が終始「社会保障と税(の一体改革)」を法案として固めようとする姿勢は、大企業、財界を後ろ盾とする消費増税一点張りとしか感じられません。それを「不退転の決意」で押し通そうというのでは、異論が出るのが当然でしょう。 肝心の社会保障の内容、将来見通しとも明快に示されていない現状では、問題はもう一方の消費増税とそれを取り巻く政治環境に傾注せざるを得ません。 民主党自体、3年前の総選挙に掲げて政権を取ったマニフェスト、いわば選挙「公約」をずたずたにした感があります。ある評論家は、公約とは別の施策に転じるとは「これは詐欺に近い。政党が処罰されないのは法律的な不備に過ぎない」と厳しい。(同上、「経済気象台」2月3日付)代表例の一つは「コンクリートではなく人間に役立つ予算を」と言い続けてきたのに、将来の水需要が減るはずの巨大ダム建設に予算を割いている事実です。増税路線を突き進んでいるのもしかり。 衆議院480議席のうち比例区が180議席あり、少数独占を多少緩和できても、その比例区を、ほぼ半数の80議席削減して100議席に減らせば、小選挙区を支配する大政党による、寡占支配政治が間違いなく現実になってきます。 「中間レポート」にはまだ続きがあります。今回は選挙制度の話が長くなりましたので、ここで一区切りして、続きは次の機会に譲ります。 (3月23日記。国際サブロー) | ||
| 2012.02.22 | ||
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| あなたは、健康診断と同様に、1年に1回か2回、定期的に歯と口腔(こうこう)内の点検や磨きを歯科医院でやっていらっしゃいますか? それとも、「歯や口の中は、痛くなってからでいい」とお考えですか? 視力や聴力などの5感とは別に、からだの中で、口と歯は連日一番使っている機能です。三度の食事やおやつに夜食など使い放題使って、寝る前に歯磨きさえすれば、あとはそのままでいいのかな?−歯石や歯垢を取り除き、1本づつ磨きを掛け、歯ブラシの動かし方をはじめ歯磨きの方法まで教えてくれて、すべて健康保険が使える−こんな有効な健康管理方法を活用しないのは「もったいない」。 今回は、歯医者さんの話、歯磨きの話です。特に、早1年前となる東日本大震災での歯科医チームの活動と、そこで明らかになった健康維持の話をはじめ、歯磨きの習慣とその底力など、健康と快適な生活を続けていくために有用・有効なストーリーを紹介していきます。 松本歯科大には、障害者歯科の専門部門があり、高齢者の治療実績が多く、施設のお年寄りや精神的ショックで自宅から出られない被災者宅に出向くなど、活動範囲を広げました。松本歯科大チームの活動に刺激され、他のチームも歯科衛生士2人に増員し、きめ細かいケアの態勢を取るという、よい影響を受けたそうです。 南三陸町は子供の永久歯の虫歯本数(治療済みを含む)が他の地域より多いデータなどから歯への関心が薄いといわれてきました。歯の治療に通いづらい漁業従事者が多く、年配の家族が子供たちの世話をする地域性も背景にあるとされます。松本歯科大の歯科衛生士は「なかなか症状をいってくれない。歯や口の中は痛くなってからでいいという意識がまだまだ強いようだ」と話しています。 歯周病を治療すると、糖尿病の血糖値が改善されることもよく知られてきました。記事はその1例です。4年前に歯の異変から重度の歯周病患者だと知った50歳代前半の美容師さんの話。日大歯学部病院に1年余り通い、歯石の除去や歯根面の処置などの治療を受け、歯磨きや歯間ブラシの使い方の指導も受け、診察のつど血糖値を聞かれてきました。糖尿病の代表的検査値(ヘモグロビンA1c)が、歯周病治療前の、合併症進行に関わる7.0%が6.3%に下がったそうです。 つい先日、新聞紙面で、歯磨きについての最新情報を読みました。主な記事を以下にご紹介します。参考にしてください。(2月11日付『日経』土曜特集「プラス1」健康生活欄参照) (2月17日記。国際サブロー) |
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| 2012.01.29 | ||
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| 東京と神奈川の境を流れる多摩川。その中ほどから下流に広がる河川敷を歩いたことがありますか?広くてまっ平らで気分壮快です。私は数年前の初秋に友人たちと、都内ではめずらしい静かなせせらぎを聴く等々力渓谷を散策した後、河川敷に出て二子玉川駅に近い隠れ家レストラン(チョー美味のイタリア料理店)まで、早足で歩きました。好天の一日でしたが。秋口のウイークデーだったので人の姿はごくまれ。対面者も少なく広大な自然の風物に圧倒されました。ところが次の話は、そこに問題があったようです。
今回は、世界遺産の話をしたいと思いますが、この書き出しの話題は、まるで違うと感じられるかも。一種の“事件”につながりますから。とにかくお読みください。 多摩川河川敷には、ずっと以前から、休日には大勢が訪れ、子供たちも一緒に遊び回る広場になります。管轄する国土交通省は「河川法では自由利用が原則」だそうで、それは結構ですけれど…。去年の秋、ほとんどの新聞が主に社会面で報じたのは、近年一部の来訪者がバーベキューを随所に広げ、花火を打ち上げ、付近の住民に多大の迷惑を及ぼす事態になっており、沿岸の市と住民が決定的対策に乗り出した、という記事です。 この報道を見聞きして、私が思い起こしたのは、世界遺産に富士山を申請する経緯です。何年か前に、「自然遺産」の登録申請に踏み出そうとしたものの、その途上で見送った理由が、山を取り巻く環境保全の課題でした。今度はそれを「文化遺産」の登録申請に切り換えて、という。なぜか。文化遺産の申請だと、環境問題に触れないで済むのか。もしそうだとしたら環境問題にはどう取り組むのか。どこかに、逃げの姿勢を感じます。 ここで「世界遺産とは?」に簡単に触れておくと、人類の宝を守る目的で、1972年にユネスコ総会が条約を採択して決めました。日本は92年に条約を批准し、「法隆寺地域の仏教建造物」、「白川郷・五箇山の合掌造り集落」や「姫路城」「厳島」などの文化遺産、また、自然遺産が「屋久島」「白神山地」や、去年、希少な動植物の宝庫として「小笠原諸島」が認められた記憶は新しく、合わせて14件が登録されています。世界でも著名なエジプトのピラミッドや中国の万里の長城、米国の「イエローストーン国立公園」などはもとより、今日では1千件に近い文化遺産、自然遺産、両者の特質を持つ複合遺産が登録されており、年々増えていく方向にあります。 富士山の登録申請がいったん見送られた最大の理由は、山の至るところに広がるゴミ問題だったと記憶しています。登山者が、まさか山頂や中腹でバーベキューや花火を繰り広げたとは思われませんが、弁当、食べ物、アキ缶、腰掛けたゴザや紙類を、決められた場所にキチンと捨てずに、勝手にほうり出す、場所を選ばずそのまま放置するなど、環境悪化が目を引いたと考えられます。山を愛し自然を大切にする気持ちが微塵も見えません。 世界遺産に登録を申請するからには、山は汚さない、自然環境を守り、快適な登山を保証する手立てが先行すべきだと思います。まして、自然遺産から文化遺産に申請の道筋を変えると聞くに至っては、節操がない無理な話だと考えます。そもそも文化遺産は、歴史的に著名な建造物や遺跡が主対象です。富士山は、日本人の心の拠り所であったり霊峰と呼ばれる特異な存在といわれても、山は山、自然遺産であるはずです。日本には多種多様な山々が立ち並び景観を競っていますが、富士山が、中央アルプスや北、南のアルプスなどとも違う特異な姿は、独立峰だからです。それだけに裾野や周辺にも独特の自然が広がる。比較的に登りやすく危険度が少ない。私が中学2年生でさほど難儀なく登れたのも、ひたすら頂上に向かって歩き通せたからでした。今は、外国人を含め登山者は年間30万人といわれます。富士山を世界遺産にと望むならば、日本を代表する自然遺産の一つとして、その基礎に、山の環境の保全・整備を徹底する措置を据えて、揺るぎない基礎の上に立って申請に臨んでほしいと思います。 せっかく冒頭に狛江市の「バーベキュー禁止」の話を記しましたので、市の条例制定に至った貴重な経過を紹介しておきましょう。(1月6日付『朝日』朝刊3面「カオスの深淵」参照) (1月26日記。国際サブロー) |
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| 2012.01.05 | ||
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| ユーロ圏が大きく揺れています。前回お話しした「歴史的円高」の一大要因でもあります。ユーロが、ドルや円、元などと並ぶ有力な通貨であることは分かっていても、「ユーロ圏」というと、ピンときますか? EU(欧州連合)とどう違うのか?どんな紙幣(お札)なのか? 今回は、2012年の初回ですので、経済の話につきものの数字は最小限にとどめ、ユーロの話をきっかけに、どんな紙幣(お札)か、日本のお札も知っているようで初耳の話を。さらに、年末と年始統合のいわば「ワイド版」!として、グッと範囲を広げ、2012年の世界の経済と政治はどう動きどう変わるか、新年の展望を見渡したいと思います。 初めに、頭書の?(クエスチョンマーク)から簡単な注釈を…。EUは1990年代初期に発足、現在は欧州27ヵ国の地域連合で、European Union の略称。直訳は欧州連合。代表者にEU大統領、外交を一元化する「外相」があり、G8、G20等々の国際会議には、各加盟国のトップとは別に、EUとして列席、参加しています。 片やユーロ圏は「ユーロ」を共通の単一通貨とする17ヵ国(2011-1-1からバルト3国のエストニアが加入)で構成し、国内政治、特に予算編成、財政運営は各国の主権にゆだねています。そこに問題が起きる原点があると言われがちで、当『サロン便り』は、一昨年、第24号、25号の2回にわたり(2010-5-25、同-6-9配信)信用危機の実態を詳しくお話ししました。本質は当時と変わっていません。今度の危機の起こりや経過は、新聞や雑誌でさまざま報じられていますから今回は詳述を避け、さっそく紙幣の話をしましょう。 ユーロの紙幣、日本の紙幣 ユーロ紙幣って見たことあります?−今や円高ユーロ安が進行中なので、欧州への旅には絶好のチャンス。最近実行された方はご覧になったはず。私は、欧州諸国には、東西南北あらかた出向いていますが、ユーロ流通以前の話で、今のユーロ札は見ていません。海外経済の専門家Uさんに100ユーロ、200ユーロ札を見せてもらうと、色合いも薄く、一見すごく地味。米ドルや日本円など他国の紙幣と違って、表・裏とも人物の顔が一切ない。風景の絵はあるが、どこのどんな建物か不明です。 Uさんは、こう話してくれました。「見ての通り、窓、橋、建物が描かれ、きっとどこかにあるはずと思うけれど、実際にはない架空の風景です。人物も米ドルならジョージ・ワシントンが、高額になると、名が知られていない大統領が出てくる。中国では毛沢東が幅を利かし、どこの紙幣も顔と著名な風物が描かれている。ユーロ札には、発足時にギリシャ人の顔が候補になったが、文化人さえ外され、だれの顔もありません。」そして「国家の背景は皆無です。紙幣に顔がない、どの国の風景もないのがユーロの特徴、核心なのです」と。 改めて日本の紙幣をよくみると、その質は最高水準にあると痛感します。西洋史家で都心の「印刷博物館」長でもあった樺山紘一氏は、「美しい。なによりも精緻にできている。偽造がほとんど不可能」とおっしゃる。デジタルの時代に、これだけはいまだにアナログ印刷で、彫刻刀で銅版画を作成するとのこと。私も初耳だったのは、明治時代に維新後の新政府が紙幣の技術を海外に求め、白羽の矢をたてたのが、紙幣の銅版画のプロだったイタリア人のエドアルド・キョッソーネ氏。お雇い外国人として高給で呼ばれ忠実に働き、何百種類の銅版原画と要人の肖像画を制作し、日本の水準を一挙に高めたといわれます。「及ぶところ万般」の器用さで、今もなお日本の職人さんたちの腕に引き継がれているとは! こういう危機に乗り出すはずの超大国・米国は、財政赤字がかさんで四苦八苦。その現状は新聞、テレビでご承知の通りです。昨年の中間選挙で敗れたオバマ民主党は共和党との局面打開の協議が難航し通しです。失業率9%は、耳にタコができるほど、ずっと聞かされてきた高い数字。格差と雇用低迷で「オキュパイ(占拠)」運動がウオール街中心に長期化しました。米国では、上位1%の富裕層に富の40%が集中しているといわれます。若者を中心に「富裕層に増税を」「金融機関に規制を」が反ウオール街デモの主流でしたが、他の大都市にも広がり、反戦、反核などの主張も現れました。運動初期の9月に、「オキュパイ」の実況をテレビでみると、現場のニューヨークでも全国規模でも、デモへの支持率80%前後と聞いて驚きました。この種の運動に批判的だった米国内の世論も変わってきたと感じます。 ロシアは、今月上旬の総選挙で政権党の「統一ロシア」が議席数を減らしたものの過半数は維持しましたが、問題は3月に予定される大統領選です。現職のメドベージェフが失政もないのに1期で降り、予期通りまたプーチンが出てきます。しかも1期6年に延長を決めて。有力な対抗馬がいない以上、総選挙での不振も何のその、プーチン当選は確実でしょう。けれどもすでに2期やって、3期目は憲法上認められないから、1期抜けて再登壇とは、政略以外の何ものでもない。きっとこれから2期、2024年まで12年やる気でしょうね。当分は、プーチン帝王の時代が続きそうです。 次は中国。昨年10月、指導部の大幅な世代交替が予期される党大会を、今2012年後半に開くことが決まりました。胡錦涛国家主席の後継には、07年の前大会で、習近平(シー・チン・ピン)副主席(58)が予定され、胡主席と同じ共青団出身でライバルの李克強副首相(56)が温家宝の後継の首相になると思われます。私は、胡主席は、真面目な優等生という印象で堅物視しています。が、習副首席は習忠勲・元副首相の長男で、いわゆる「太子党」(高級幹部の子弟)ですから党内で幅広い人脈を持ち、どちらかというと保守的な人柄といわれます。外交、安保にどう動くか、新トップは世界注視の的でもあります。 それより前、4月22日には、フランスの大統領選挙があり、現職のサルコジがどうなるか。反政府のデモやスト、移民問題に強権をもって対処、発動を唱えて当選以来、そちらの成果よりも私的なトピックスが目立ちます。ユーロ圏の危機に追われているせいか、選挙情勢には熱気ある報道がまだ見られません。そんな中、過日知ったのは、フランスが2院制で、上院の「元老院」で野党が過半数を占めた、という新聞報道でした。フランスの立法府は、国民議会(アサンブレ・ナシオナル)だけの1院制とばかり思っていたら、2次的地位にせよ、定員90名、間接選挙による元老院(セナ)があり、3年ごとに3分の1が改選されます。野党勢力がジワリ上げ潮に転じているのかどうか。(2院制の記事は『ブリタニカ国際百科大辞典』平凡社版による) 最後は秋に予測されるドイツの総選挙。現政権を率いるメルケル首相は、EU、ユーロ圏に限らず、広く国際社会で積極的に活動する場面が多くテレビでもお馴染み。特に環境問題や反核運動のリーダーと目されてもいます。しかし基盤のCDU(キリスト教民主同盟)は、連立の組み立て、組み替えなど、政権堅持の方策に苦心が付きまとう状況のようです。 日本の周辺では、新年早々の台湾総統の改選(1月14日)後、春には、インドネシアで大統領選挙が控えています。トップの交替、政権変動の可能性をはらみ、世界は激動の年になりそうです。 ワイド版を目指したゆえに、長大な話になりました。今年は、話題を絞り、内容を切り詰めて、もっと読みやすい話にまとめたいと思っています。 (1月5日記。国際サブロー) | ||
| 2011.11.18 | ||
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「歴史的な円高」。新聞もTVもこぞって「歴史的な」と報じます。戦前はいざ知らず、円高は史上最高値の更新を続けていますので。もう一つの「史上最高」があります。この円高に対し、財務省が史上最大の為替介入を実行しました。 実をいえば、ちょうど1年前に、円高、外国為替市場、投機マネーについて『サロン便り』第30号、31号と2回にわたり三部作みたいに詳しくお話ししました。「またか?」とおっしゃる方もあるでしょう。そう思って、私自身、前の2回分を読み直しました。今回は事態が違います。日本国内にとどまらず国際経済の大事態で、今後の国際政治、経済、社会の動向に影響甚大と考え、私の疑問や意見を述べながら問題を掘り下げていきたいと思います。まず、最新の新高値の話から。 さる10月31日の朝6時半過ぎ、テレビのニュースを耳にして急いで起床しました。見聞きしたのが「歴史的な円高」の実相でした。その場で聞くのと、後で活字で知るのとでは衝撃も印象も違います。ここ数ヵ月、1ドル=75〜6円の円高が続いていましたが、この日の早朝、75円32銭の史上最高値をつけ、また円高記録の更新!さっそく財務省が今年3度目の為替介入に乗り出し、一日中、TV各局のニュース、夕刊から翌朝の新聞まで、このトピックスで持ち切りでした。 なぜ円がそんなに買われ、高値が続くのか。いくら欧米の経済が不調、不振だからといって、東日本大震災の惨禍をこうむり、経済復興、民生安定にもたついている日本の円が、最高値を更新するほど買われるとは!この際、掘り下げて考えないと気が済まない。一介の市井人とはいえ、専門家や研究者の談話を参考にするとしても、自分のアタマで、ナゾ解きのつもりで考えてみたい。ご一緒に「歴史的な円高」に迫ってみませんか。 なぜ「円高」では困るか。巨額の為替介入をしてまで円高に挑むのか。 「想定為替レート」をご存じですか。企業が経営計画や業績見通しをまとめる前提となる為替レートのことです。9月の日銀「短観」(企業短期経済観測調査。4半期ごとに調査し公表)によると、大企業製造業の2011年度の想定レートは1ドル=81円15銭と、過去最高の円高水準でした。実際のレートが想定より円高に振れれば輸出企業を中心に業績の下方修正リスクが高まります。調査内容に「為替感応度」というのもあります。1円の為替変動で年間いくらの利益増減につながるかを調べています。感応度が高い代表的業種には、自動車、電機、精密などあり、例示すれば、トヨタの想定レートは、80ドル/115ユーロ、為替感応度は、ドルの場合340億円/ユーロ60億円、パナソニックは、想定レート同83ドル/110ユーロ。感応度がドルで38億円/ユーロ17億円。各企業の想定をかなり上回る円高が続いていることが分かります。(10月7日『日経』朝刊「きょうのことば」から。著名8社の数字が載っていますが他は割愛します) 『日経』の10月18日朝刊経済欄「ポジション」には「ドル安より痛いユーロ安」の見出しで、こんな記事が載っています。「米国とは違って、欧州には日本企業の拠点は少なく、海外生産の拡大で、円高の影響を和らげる手が使えないから」。日本総合研究所の試算では、今年度下半期の円相場が1ドル=75円で推移すれば、国内製造業の収益は(なんと!)約300億円のプラスとなる。自動車など加工業種の収益は目減りするが、ドル建てで輸入される原料やエネルギーの調達コストが減るからだ、というのです。輸出企業でも、多様なプラス/マイナスが交錯して業績が調整されるのが分かります。「ユーロ安が痛い」といわれても、財務省の介入対象は円売りドル買いで、ユーロ買いは考慮外でしょうが…。 話のホコ先を変えますが、少々フ(腑)に落ちないというか、日本人には「輸出立国」に思い過ぎがあるのではないか。日本には資源が乏しい;優れた技術があるのだからモノづくりに徹すべき;輸出こそ繁栄の道だ;と。やや単純化した嫌いがありますが果たしてその通りか。 話を史上最大の為替介入に移します。高値更新から一夜明けた11月1日の『朝日』朝刊は1面トップに「最大の介入 10兆円規模」と大見出しをつけました。まさか!と驚いたのは私だけではないでしょう。日経は同日夕刊1面に「7〜8兆円」の見出しと記事。それでもその巨額には驚きです。 むしろ外為介入は、タイミング、金額、公表の仕方がきわめて大事。誤ると効果が薄れます。輸出産業と輸入産業の双方への目配りも必要でしょう。円安誘導の円売りは、「輸出産業への補助金」とも批判されます。今度の介入は、果たして適正だったと言い切れるのでしょうか。さきに記した幾つかの疑問が、アタマをもたげてきます。輸出業界支援とすれば、少々度が過ぎてはいまいか。これほどの巨額を投入するならば、他の用途、方策があるのではないか。 現に、日本の為替介入は今年3度目ですが、初回の3月18日には日米欧7ヵ国(G7)が、日本の呼び掛けで円高を抑えるため協調介入に踏み切ったのでした。前回はユーロ安是正が狙いで、円高を阻止する協調介入は95年8月以来です。なぜ3月に協調介入ができたのか。大震災直後でしたから、日本の企業や機関投資家が、手元資金を増やそうと、海外資産を売って円に交換するという思惑が市場に走って、円が急騰したからでした。日本は約1ヵ月に約7千億円、G7全体でも1兆円規模の投入で成果は上々。外為市場での1日の円とドル取引規模は50兆円程度と見られますので、小さい介入額でも相場を動かし得たことになります。 (11月14日記。国際サブロー) |
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| 2011.10.14 | ||
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| 毎週土曜日、夕方6時から放映のNHK・1チャンネル「海外ネット」はご存じですか。私の好きな番組、というより見たい番組の一つというべきでしょうか。ナマの海外ニュースは随時見たり聴いたりできても、最新の幾つかの出来事や社会の動きを取りまとめ、簡明な解説づきで紹介する45分の番組は、これしかないのではないか。諸外国のニュース報道はBSで視聴できますし、例えば有力国の大統領選とか中東の政変など、特定の情勢や動向の解説、座談会等は放映されれば見聞きしますが、毎週定時に組まれる「海外ネット」のような企画は、ほかのチャンネルでは難しいでしょう。途上諸国の動きが多いのも私には魅力です。 10月1日の土曜は、最初のテーマが「韓国で増加するシングル族」でした。日本より家族制度が強靭と思われる韓国でも、若い女性のシングルが急増している現況を、映像や、統計入り解説で知りました。インタビューに出た女性は「結婚はしたいが、今の仕事の満足度やプライドが結婚して損なわれるのは困る」と答えていました。結婚したくないのではない、現状を変えたくないとの気持ちが、両親や周囲をも納得させているのか。そんな現象に即して、スーパーや商店の品物も小口、少量に変わってきたと、映像が店先の現状を紹介していました。 それは韓国での話。日本ではどうでしょう。経済、社会の発展も若い女性の意識も、はるかに先行しているのではないか。−−そう、実はその通り。少子・高齢化が予想の速度を超えて進行し、通称「シングル経済」が活気を呈しています。日経新聞の連載「膨らむシングル経済」(8月1〜3日付朝刊)や雑誌の記事を参考にしながら、シングル経済の現況や商いの変化、高齢化の現実にも良い影響を及ぼしている事例を見ていきましょう。 時々、近在のスーパーを主に、家内の買い物に同行していますが、男性の高齢者単独の客が増えたなと感じます。店内での動き方や買いぶりから、奥さんに頼まれてきたのでない、きっと単身者に違いないと想定できます。私が現住する地域には、都心から離れた広大な住宅団地二つが並立し、すでに核家族化、高齢化が目立つと聞いています。そうなっても、夫妻ともに健在であれば幸いですが、一方が先立つ例が、ご近所や広く私たちの友人の間にも現れつつあり、世間ではよく「お一人様」が増えてきたといわれます。片親だけになっても、息子や娘たちが合流や回帰をしないと、スーパーで私が感じている変化も、やむを得ない情景かと思われます。 幾つかの実例を、上述の記事から拾い上げて記しますと; 話題を変えて、宅配牛乳が顧客宅を訪ねて商品を手渡しするサービスについて。通常の宅配は、拙宅にも週2回、玄関先に置かれた箱にヨーグルトを届けてきますが、長岡市に本社があるM社では、宅配員が日中に配達に回り、届け先の要望を聞き、コメや日用品なども届ける「ご用聞き」を兼ねています。高齢者の顧客と言葉を交わして、いわば「見守り役」も果たすという親切サービス。東京の多摩ニュータウンにまで顧客を広げ、91歳のお年寄りが、週に2回の女性宅配員来訪を楽しみにしているという記事を読みました。 ファミリーレストランの変容ぶりには驚きました。家族や友人同士で楽しんでいたのが、最大手のスカイラークが、甲府市の店舗を1人利用が多い丼店に変えたとは。 単身者の生活環境は快適さを増し便利にはなっても、未婚、晩婚化が加速するのはなぜでしょうか。若い人たちの独身志向が、冒頭に記した韓国でのシングル族の意識に通じるだけではないのでは?。内閣府によると、20〜30歳代の未婚者のうち、将来結婚したいと考えている人の割合は、男性で83%女性は90%にも上るそうです。東日本大震災以降、1人でいる不安から、結婚に向けた「婚活」が勢いづいているといわれ、ヤフー運営の結婚仲介サイト「ヤフーお見合い」の登録者は急増中とか。利用料が、専業の仲介サービスより割安なのだそうです。 シングル経済の活況は社会の現実を反映しています。それなりに理解し評価はしても、裏返していえば、本来の経済発展から逸れた、それぞれの業界や企業の、良くいえば知恵比べ、一般には苦肉の策という一面を示しています。また、違った言い方になりますが、一種の「生きもの」である経済、社会が、何としても苦境を切り開きながら前進せざるを得ない活力を持っていることを教えてくれているのではないか、と考えています。 (10月7日記。国際サブロー) |
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| 2011.09.24 | ||
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| 電気自動車や薄型テレビなどハイテク製品を作るのに欠かせないという「レアアース」。近年、新聞やテレビにかなり大きい見出しや映像で、レアアースのニュースが登場します。ひと頃、中国との間で商談、貿易面でもめていました。ハイテク製品の開発関係者や資源確保に動く商社員、研究職の方々には数十年前からお馴染みでも、フツーの勤労者や市民、おじさん・おばさんは、ハイテク製品の恩恵に浴してはいても、「レアアースとは何か」、その正体?はほとんど知りません。見たこともない。日本語でいうと「希土類元素」だって? ますます分からない。 そこで今回は、レアアースの話をわかりやすく説明し、現況や将来の展望などをお話していこうと思います。難しく考えずに、先行き明るそうとの期待感も持ちながらお読みください。 まず、レアアースの意味から。「レア(rare)」は英語で「希少な」。「アース(earth)」は定冠詞theが付けば「地球」ですが、それだけなら「土」「地面」。「希土類」と訳すのはそのためですが、どんな希少価値があるか、2語くっつけてもピンとこなければ邦語訳は忘れて、じかにレアアースでいきましょう。「レア」っていうと、食通の諸兄姉は、肉の生焼きを思い出すかも。rare とかwell-doneとかの。spellingは同じでも語源が違い関係なし。英語学者の友人によると、レアアースのrareはもとはラテン語で、フランス語も同じ。rare beef のrareはゲルマン系の語で来歴が異なる由。ご参考までに。 さて、レアアースとは? 単行本はもちろん新聞・雑誌の解説はほとんど「レアメタル(希少金属)の一種で…」から始まります。延々と金属の話からレアアースにたどり着くのもあり、レアメタルが主役の観。ズバリ見出しどおりにレアアースの話ができないか。 日経「レアアースの科学」の解説記事をさらに続けると、「よく比較されるレアメタル(希少金属)は単に埋蔵量が少ないという意味で、科学的な分類ではありません。経済産業省はレアアースを含めた47元素をレアメタルと指定していますが、実際には少なくないレアアースもあり、レアメタルに含めることに異論も出ている」のだそうです。 (9月20日記。国際サブロー) |
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| 2011.08.29 | ||
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| 「日本の電力・民営の成り立ち」の話・後編に入ります。テキストは前回紹介した日経紙上の『やさしい経済学』一橋大学教授・橘川武郎さんの連載記事です。 9電力の黄金時代 1951年(昭和26年)に電力事業再編成によってできた9電力各社は、50年代後半から70年代初めにかけての日本経済の高度成長期に「低廉で安定的な電気供給」を実現しました。55〜73年に、東京都区部の消費者物価指数は2.4倍になりましたが、東京電力の電灯総合単価は1.2倍にとどまりました。この時期は、民間電力会社が企業努力を重ねて、安価で安定的な電気の供給という公益的課題を達成し、日本の電力業の歴史の中で、特筆すべき「黄金時代」といえます。なぜ高度成長期に、民営公益事業方式が大きい成果を上げ得たのか。その理由として、橘川氏は次の2点を上げています。 第1は、後の時代と違って、官と民との間に相当の緊張関係があったこと。この時代は、電力の国家管理を復活しようともくろむ政府と、民営9電力体制の定着を目指す民間電力会社とが、官営か民営かをめぐってツバ競り合いを繰り広げました。戦前の電力事業法が1950年に廃止され、戦後の新しい電気事業法が制定された64年まで、14年間もの空白が生じましたが、経営形態をめぐる対立が深刻だったからです。政府は特殊法人の電源開発を設立し、佐久間ダムを建設して官営の優位を誇示しました。対抗して9電力の一角を占める関西電力が、単独で黒部川第四発電所を建設し、民間でも大規模ダム開発ができることを示しました。 両者の対立は、結局は、民間電力会社側が、経済性の観点から、電源開発を水力中心から火力中心に転じ、主要な火力発電用の燃料を石炭から石油に変えて、勝利をおさめました。水力中心に固執し、火力では石炭に傾斜した政府側は敗北でした。この結果、64年制定の新電気事業法では、民営9電力体制が認められました。 民間公益事業方式が成果を上げた第2の理由は、市場独占が保証されていたにもかかわらず、9電力各社が活発に合理化競争を展開したからです。50年代後半から70年代初めのこの時期は、その前・後と異なり、電気料金の改定が9社いっせいではなく各社ばらばらで、他社より少しでも長く値上げをしないですむようにと、各社が競い合って経営合理化に取り組みました。その結果、電源の大容量化、火力発電の熱効率向上、火力発電用燃料の油主炭従化、火力発電所の無人化、送配電損失率の低下などが急速に進みました。 橘川氏は、この時期の9電力会社は、民間活力を大いに発揮して「お役所のような存在」ではなかった、と述べています。 石油危機の影響 1973年(昭和48年)に起きたオイルショック(第1次石油危機)は、日本経済の高度成長だけでなく、9電力体制の「黄金時代」をも終わらせました。「黄金時代」を支えた政府と9電力間の緊張関係、各社間の合理化競争のいずれもが消滅し、電力業界が新局面に入ったからです。 政府と9電力会社間の距離は、電力施設立地難の深刻化と、原子力開発の重点化という2つの事情から、一転して近くならざるを得なくなりました。すでに70年代に入ると産業公害が大きい社会問題となり、その影響で、電力関連施設をめぐる立地難がきびしくなりました。電力会社だけでは克服できず、行政への依存を強め、立地難を緩和しようとしました。電源開発促進税法など電源3法が74年に施工され、発電所を受け入れた自治体には、交付金が流れるようになります。 原子力政策も政府と9電力間との距離を縮めるうえで大きい意味がありました。「安定的な電力供給」を最重要課題に掲げた9電力会社は、オイルショック時の石油輸入の途絶に危機感をつのらせ、原子力開発に全力を挙げるようになりました。電源構成に占める石油火力の比率は、2009年では8%でしたが、73年の比率は73パーセントに達して過度の石油依存でしたから、高依存率からの脱却が必要でした。 一方、9電力が推進し始めた原子力開発は、スムーズに進行したのではありません。この頃には、原子力発電の安全性に対する不安感が、国民に強く広がっていました。十分な国民的コンセンサスが得られない状況下で原子力開発を進めることになった9電力会社は、政府の強力な支援を必要としました。この脈絡で、原子力政策が政府と9電力との間の距離を縮める意味合いを持ちました。 また、原油価格の急騰で、9電力会社は、74年から80年にかけて電気料金を3回にわたり大幅値上げしました。74年以降、各社は料金改定に際して、横並びでいっせいに行動するように変わりました。電力業界のカルテル的傾向は強まり、以前に作用していた「値上げ回避のための合理化競争」のメカニズムは消滅しました。安定供給至上主義が浸透する一方で電気料金は上昇し、「低廉な電気供給」は過去のものとなりました。電力会社は「お役所のような存在」に変容し、民間活力が後退しました。90年代半ばから始まる電力自由化を必然化する状況が形成されていったといえます。その話は、末尾に記します。 原発の光と影 橘川氏は、次に「原発の光と影」の1章を記述しています。私見は脇に置いて、同氏の記述をもとに、以下に、この章の要点を書き続けていくことにします。 日本の原子力発電のスタートは、1950年代半ばのこと。55年(昭和30年)に原子力基本法など原子力3法が成立しました。当時は、電力業の経営形態をめぐって政府と電力会社との間に対立も見られたけれど、原子力発電(以下「原発」と記します)に関しては、初めから官民協調が成立していました。 今日までの原発の歩みは、(1)国民的期待を受けてのスタート(55〜73年)、(2)原子力大規模開発と国論の分裂(74〜85年)、(3)国策民営方式による調整(86〜2002年)、(4)原子力ルネサンスと政策的支援(03〜10年)、(5)福島第1原発事故以後(2011年)という5つの時期に分けてとらえることができます。 (1)の時期は、原発が「夢のエネルギー」として期待を集めた特有の事情がありました。当時は国内炭の減退によるエネルギーの自給率の低下が不安視され、原料のウランを輸入するものの、それを長期にわたり使用することができる原子力が、準国産エネルギーと見なされ期待が高まったのでした。オイルショック直後の(2)の時期には、「脱石油の切り札」とされた原発の必要性が高まり、数多くの原発が建設されました。しかしこの時期は、原子力船「むつ」の事故や米国のスリーマイル島原発事故などが起き、原子力利用の危険性に対する認識が高まり、原発をめぐる国論が二分されるに至りました。 86年(昭和61年)の旧ソ連チェルノブイリ原発事故は、原発の危険性を世界に示しました。日本の国内でも高まった「脱原発」の声に対抗して原子力開発を進めるには、「国策」であると前面に押し出さざるを得ませんでした。(3)の時期には国策民営方式による調整が本格化しました。難しさを増した原発の立地を進めるために、地元の説得に当たっては、「国策」であるからと特に強調せざるを得なくなりました。 (4)の時期には、石油、石炭、天然ガスなど化石燃料の価格高騰、地球温暖化問題への危機感の高まりなどを背景に、原発の再評価が世界的に進む「原子力ルネサンス」が国際的な潮流に現れました。技術的、経済的な理由で再生可能エネルギーの普及が遅れるなかで、原子力は二酸化炭素を排出しない「最強のゼロエミッション電源」とみなされました。しかし、(5)福島第1原発事故を契機として、その流れは変わろうとしています。 こう振り返ってみると、原発の歩みには、光と影が幾度も交錯し、原発のこれからを決めていくには、原発を即刻ゼロにできにくい現況も考慮に入れ、危険性と必要性の双方を直視して、冷静な議論が求められます。 「原発の光と影」はここで締めくくり。以下に関連する問題、課題を記していきます。 国策民営の矛盾 日本の原発事業は、民間9会社によって営まれながら、「国策」による支援=国家の介入が必要不可欠という矛盾を抱えています。前述した事情は、原発立地が電力会社単独ではできず、電源3法の枠組みなしでは不可能ということでした。この枠組みとは、電気料金に含まれた電源開発促進税を政府が民間電力会社から徴収し、それを財源にした交付金を立地に協力した自治体に支給する仕組みです。 ずっと深刻なのは、使用済み核燃料の処理。「バックエンド問題」と呼びます。リサイクル(再処理)するにせよ、ワンススルー(直接処分)するにせよ、国家の介入なしでは実行不能です。日本政府はリサイクル路線を採用していますが、核不拡散政策との整合性を図る必要があり、それは市場メカニズムとは別次元の政治的・軍事的事柄です。 さらに、実際に起きた福島第1原発の事故では、最重要の非常事態発生時の危機管理についてさえ、民間電力会社だけでは対応できないことが明白になりました。自衛隊、消防、警察、そして米軍までもが1〜4号機の冷却のために出動せざるを得ませんでした。 現行の「国策民営方式」の大きい問題点は、原発をめぐって、国と民間電力会社との間に持たれ合いが生じ、両者間の責任の所在が不明確になってしまっていることです。 エネルギー政策のあり方として、「国策」がどうなるか、現時点では不明ですが、少なくとも国策民営の矛盾は速やかに解決を計るべき事柄です。橘川氏は、電力各社が、国策の支援が必要不可欠な原発事業を、経営から引き離す方が、よい意味で私企業性を取り戻し、民間活力を発揮することができるのではないかと述べています。その上で、9電力中最大の東京電力でさえ、いったん重大事故を起こせば経営破綻の瀬戸際に立たされる現実を見れば、民間電力会社の株主(場合によっては経営者)の中から、リスクマネジメントの観点で、原発事業を分離しようという声が上がっても不思議ではない、と結んでいます。 全面自由化は頓挫か 終章の「残された課題」の中で、橘川氏は、オイルショック後の時期にも「安定的な電気供給」は確保されたけれど、「低廉」が難しくなり、1980年代半ばに石油価格が下がり為替市場で円高が進んでも、電気料金が高止まりしていると批判が集中した経過を取り上げています。批判を浴びた電力業界が95年(平成7年)から実施したのが電力自由化です。専門的な内容は省きますが、2008年までに4次にわたって遂行され、新規参入や事業間競争ができる重要分野が徐々に拡大中です。その過程で電気料金は低下し、95年度から2005年度の間に約18%下がりました。しかし家庭分野にまで広げる「全面自由化」は見送られ、自由化の分野は需要全体の6割にとどまります。また、電気事業者間の地域を超えた競争は、わずか1件しか起きていません。日本の電力自由化は、道半ばで頓挫の現状です。 例の「計画停電」で、非常時に北海道から九州まで必要な規模の電力融通にする声が強まりました。それを可能にするには、すでに述べた東と西の周波数の違いを変換する装置や、同じ50ヘルツ同士でも、交流をいったん直流に変え、再び交流に戻すため脆弱な北海道・東北間の連系線を抜本的に拡充し強化する必要があります。周波数変換装置や、この連系線拡充ができれば、電力会社間競争が現実味を増します。 競争が本格化すれば、電力の需要家にとって有益であるばかりか、長い目で見れば、電力各社にとっても競争がプラスに作用します。電力各社が個性を発揮して切磋琢磨すれば、民間活力は必ず向上します。日本の電力業が長年採用してきた「民営公益事業方式」が光を取り戻し、本来の力を発揮するには、電力会社間競争が大きな意味を持っています。 (8月25日記。国際サブロー) |
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| 2011.08.22 | ||
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| 菅首相の退陣が決まり、正しくいえば内閣総辞職が近づき、次の首相に就任する民主党の新総裁選挙が予定されています。菅首相の発言がどうだったにせよ、東日本大震災で起きた福島第一原発の大事故で原発の危険、放射能拡散が明白になり、脱原発の動きが各地に起きています。日本のエネルギー政策の見直しは必至です。 全国9電力の地域独占の現状はどうなる?存続か、解体、再編か。電力の国家管理や発電と送電・配電を分離する発送電構想や、各様の論議が予想され、その当否、得失が明らかになってくると思われます。電力問題は、産業にも自治体にも、また当然、家庭生活にも重要な関心事です。大震災への対応と今後の復興に最大の課題の一つといえます。 そこで今回は、かねて考えてきた予定を急きょ変更し、国家管理や発送電も経験してきた日本の電力業、民営の歴史を、この際再学習して知っておこう、経験しながら現状に至ったのはなぜかを考えてみようと思い立ちました。知ってるようで実はよく知らなかったことは、世の中にはよくあること。私自身もその一人です。「日本の電力・民営の成り立ち」が今回のテーマです。 さてここから先は橘川氏のいう第3の時代、9電力の黄金時代に入るのですが、枚数の関係もあり、以上を「前編」として、一区切りします。やがて石油危機から原発へと踏み込み、今日の諸問題を含む「後編」は、すぐ続けて掲載を予定して記述していきます。 (8月19日記。国際サブロー) |
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